2007年5月16日 11:24

進行しないムシ歯

ある45歳くらいの女性。ほとんどの歯にインレーやクラウンが装着されていた。主治医は、どんな小さなムシ歯でも決して見落とすまい、との心意気で治療をしたのだろう。
 昔、歯科大学では咬合面の小窩、裂溝に探針を挿入し、抜くときに抵抗感(スティッキー感)があれば、病理学的には齲蝕になっているから治療しなさい、と教えていた。しかし、近年、再石灰化の概念が導入されると、探針で齲窩をつついてエナメル質を崩壊させることを避けて様子を見ようという考えが主流になってきた。フッ化物を利用すると再石灰化が起こるので、フッ化物を応用し、削るのを嫌うことが多い。
 進行しないムシ歯(arrested caries)も知られてきて、このような歯は、放置するなり、フッ化物を塗布する。歯を削ると言うことは、ムシ歯の進行よりも何十倍も速いスピードで歯質を無くしてしまうことである。だから、歯を守る歯科医師は、歯質がなくなることに十分気を配らなければならない。
 上述の女性は昔の教育を受けた歯科医師の極めて忠実な治療のおかげで、ほとんどの歯が処置されたのであろう。
 抜かない、削らない、切らない歯科医療がいま求められている。

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