渡邊達夫岡山大学名誉教授による「つまようじ法」ブラッシングQ&A

渡邊達夫岡山大学名誉教授1歯周病というと歯茎から出血する、歯がグラグラするといった症状が知られていますが、悪化すると歯が抜けてしまったり、糖尿病、心内膜炎といったほかの病気を悪化させるという指摘もあり、放置できない病気なのです。

■ズバリ!「つまようじ法」とはどんなブラッシング方法なのでしょう?

歯と歯茎の境目をつつくように刺激して、歯茎の上皮を鍛える歯間ブラッシングです。

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■どうして「つまようじ」なんですか?

このブラッシング方法では、歯ブラシの毛先を、上の歯を磨くときは、歯ブラシの毛先を下に向けて、歯と歯茎の境目、歯と歯の間を起点に、毛先を歯間へ押し込みます。そうすると、毛の一部が歯と歯の間に入り込み、反対側につき出ます。

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この動きが、「つまようじ」を使って歯を掃除するのと似ているので、一般の人にも分かりやすい名前にして、より多くの人に取り入れていただきたいという思いから、「つまようじ法」とネーミングしました。

■なぜ、「つまようじ法」が歯周病に効果があるのでしょう?

渡邊達夫岡山大学名誉教授2「つまようじ法」を行うことが、歯周病菌に負けない強い歯茎をつくることにつながるからです。

私の研究グループでは、歯周病は宿主(ヒト)の歯肉の強さにも大きく関係していることを実証してきました。歯周病は細菌による感染症ですが、歯肉の新陳代謝が活発なときは感染しません。なぜなら、細菌が歯肉に付いても、新陳代謝により歯肉の上皮細胞が細菌とともに剥がれ落ち、その下からまた新しい細胞が出てくるからです。ところが、新陳代謝が落ちて、細菌の増殖のほうが早いと、菌が細胞の中や細胞と細胞の間に侵入していき、歯周病が進行していくことになります。

つまようじ法で歯肉に機械的刺激(マッサージ)を与えることにより、歯肉の上皮細胞の増殖を活発にさせることができます。そうすると、新陳代謝が活発になり、細菌も歯肉に侵入できなくなります。

口の中には何百種類もの細菌がいて、歯周病原菌としては5種類くらいの細菌が挙げられています。細菌をゼロにすることはできませんから、歯周病菌に負けない強い歯肉をつくること、つまり、歯肉の抵抗力を高めることが、歯周病の治療、予防には大切なのです。

■歯周病はどのように進行していくのですか?

渡邊達夫岡山大学名誉教授3歯周病は細菌のかたまりである歯垢(プラーク)が歯の表面につくことから始まります。

歯周病の初期には、歯肉から出血したり歯肉が腫れたりする「歯肉炎」を発症し、歯と歯肉の間に歯周ポケットと呼ばれる隙間ができます。

さらに進行すると「歯周炎」になり、歯周ポケットが深くなるとともに、細菌の出す毒素が歯槽骨(歯を支える骨)を溶かしていきます。このあたりから、歯がぐらついたり、口臭がするなどの症状が強くなり、末期になると歯肉から膿が出るなどして歯を抜かなければならなくなってしまいます。

初期の段階では自覚症状がないことが多く、気がつくと手遅れということも珍しくありません。 。

■歯槽膿漏と歯周病の関係は?

かつて歯槽膿漏と呼ばれていた病気は、歯周炎の末期症状をさしていて、現在は歯周病の一つに位置づけられています。

■口臭の予防にもなるのですか?

被験者13人に、つまようじ法での治療を平均7回行い、口臭の原因となる揮発性硫黄化合物の濃度変化を調査しました。治療前は250.2ppb(1ppbは十億分の一)だった濃度が、治療後は平均59.0ppbにダウン。被験者全員が、そばにいても口臭を感じない100ppb以下のレベルになりました。 (岡山大学歯学部予防歯科学講座)

■ぐらついている歯が改善されるのですか?

歯周病で歯がぐらつく人につまようじ法での治療を施し、処置の前後でどれぐらいの力をえると歯が動くか(歯の動揺度)測定しました。ぐらつきの程度が減った歯の数を調査すると、治療を受けて2週間後には74%の歯でぐらつきが改善されていました。 (岡山大学歯学部予防歯科学講座)

■抜かずに残すことって可能なのでしょうか?

渡邊達夫岡山大学名誉教授4従来の歯科医療は、病気そのものの発見と治療を起点とした発想で、「削る歯はないか、抜く歯はないか」という目でみていたので、歯は治療とともに減ってしまったのです。

最近では、新しい視点として健康を守ることを起点とする発想があります。歯科医師が目の前にいる人の健康を守るために何をすればいいか、という視点でみると、「歯を抜く状態になる前に歯肉を鍛えて治そう」というような発想が生まれるのです。

今、歯科医院でも患者さんの歯をできるだけ抜かずに残そうという考えが広まりつつあり、「つまようじ法」を治療に取り入れるところも増えてきています。

歯を抜くと、噛む能力が落ちるばかりか、噛む感覚もなくなっていきます。どんなによくできた入れ歯やインプラントも、自分の歯には勝てません。「つまようじ法」ブラッシングにより、ぐらついていた歯の動揺が治まる例が示す通り、抜かなければならなくなる歯を残すことも可能になります。

一生自分の歯で食べるために、「つまようじ法」を試してみてください。

渡邊達夫岡山大学名誉教授

渡邊達夫(わたなべ・たつお)

岡山大学名誉教授(口腔保健学)で、現在は(学)朝日医療専門学校岡山校校長、NPO法人お口の健康ネットワーク理事長。大阪大学歯学部を卒業後、広島大学歯学部助手、テキサス大研究員、広島大助教授を経て1982年から岡山大歯学部教授。歯学部長などを歴任し、2007年3月の退職時は同大学院医歯薬学総合研究科口腔保健学分野教授。

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